岡本純英院長先生のプロフィール
医師、医学博士


「患者さんに時々こわいって言われちゃうんですよー。僕の真剣な顔ってこわく見えちゃうみたいでね。困っちゃうんです」
産んで育児20年の責任を考えると、閉経の意味が見えてきます。12歳から42歳の30年間、400回の排卵の間に、将来の家族構成を見据えた人生設計が必要なわけです。そのために、有用な情報をひとりひとりの女性に与えなくてはいけません。初診の42歳と治療中の42歳を考えてみてください。私のクリニックに42歳になってからいらっしゃる方もいますが、無知なる前医の責任は重いと思います。患者さんが可哀想ですよね。
ご本人が自分に納得されるよう、言葉をかけます。人生には、全てが手に入るわけではない不条理なことがあることを確認してもらうしかないんですよね。患者さんにとってとても大事なターニングポイントですから、単なる慰めやいい加減な励ましはしたくありませんし、冷たく放り出すような態度も論外です。今後の情報の提供と主治医の哲学をしっかり伝えています。
いろいろと考えますね・・・。患者さんのことを一所懸命考えて集中していることを誤解されるのは、辛いことです。愛想だけで実力を伴わないドクターが、自らを“優しい先生”と称し、売り出して媚びる、そういうドクターになびく患者さんにも自己責任はあります。失った時間、身体能力は取り戻せませんからね。ドクターと患者とはいえ、人間同士です。僕はこわく見えると時々言われますが、患者さんからの質問に対してはいつも真摯にお答えしているつもりです。質問があれば、遠慮することなく聞いてもらいたいと思います。
(心理チームのみなさん)
主人公は患者さん、ドクターは指南役。自らに患者さんの期待に応えられる力(臨床的能力)と、カリスマ的パワーは欲しいですね。そのうえで、患者さんの心の扉を開く心理学的要素も身につけたいと思います。患者さんに共感できる心構えを絶やさないのが、僕の信念かな。
まず生殖医療の場合、患者が2名(男女の夫婦)、怪我でも病気でもないのに結果が出ない健康体という特殊性があるわけです。原因が特定できる“器質性不妊”と、原因が不明の“機能性不妊”によっても異なりますが、特に“機能性不妊”の場合は、より心の問題が重い。いずれのケースでも患者さんに対する心のケアは必要だと思いますよ。そうですね、ドクターは結果の出せるスポーツドクター。ですから、カウンセリングを司るコーチ役も必要ということでしょうね。結果が出せたら根本は解決するはずなのでしょうが、そうとも言い切れない。またその先には新たな問題が生ずる、というのが人生だとも思うんですけどね。
伝えるとしたらならば、失礼にならないように伝えなくてはならないでしょう。まずは情報伝達。間の取り方は難しいですね。必要と考える人、考えない人、置かれている立場もそれぞれです。追い込まれた立場の人もいれば、自らの気持ちが相反している人もいるでしょう。患者さん次第ですね。
実は世の中に、同じ立場の方たちがたくさんいらっしゃいます。静かに暮らしている方たちなので、あなたは今まで気がつかなかったかもしれません。でもきっとこれからあなたの目の前に現れるでしょう。人生の先輩となるその方たちとも、触れ合ってみてください。
【永森談】
このクリニック内にある院長室でじっくりインタビューさせていただきました。
次にお見せくださったのたが、UNISENSE社デンマーク工場製の培養装置のポスター。ART岡本ウーマンズクリニックではこの培養装置を2台設置し、患者さんの受精卵をこの装置で管理されているというお話へと続きました。
受精卵の成長は、通常1日~2日おきに培養士さんが培養装置から取り出して顕微鏡で確認するものですが、開閉して受精卵を外に出すと、外気や光にあたることでストレスがかかるとのこと。その受精卵へのストレスをなくすために、岡本院長先生はこの装置を導入されたそうです。よくよくお聞きすると、培養装置の中にカメラが設置されているので、パソコンに繋げ、開閉することなくモニター上で受精卵の成長を確認できるという、なんとも優れた素晴らしい装置でした。こうした最新機器も日進月歩なのですね。受精卵に対しても最善のケアをなさる先生から、完璧な医療を目指す姿勢を感じずにはいられませんでした。
永森咲希
(最終インタビュー: 2015年10月4日)