岡本純英先生(ART岡本ウーマンズクリニック院長)


 
岡本純英院長先生のプロフィール


医師、医学博士


日本生殖医学会認定・生殖医療専門医


日本受精着床学会評議員


日本哺乳動物卵子学会認定・胚細胞管理培養士


日本産婦人科学会専門医


日本生殖医療心理カウンセリング学会理事


 


1976年 長崎大学医学部卒業


同年4月 同医学部産婦人科教室入局


1985年  文部省在外研究(若手教官)甲種長期に合格。オーストラリア・メルボルンにあるモナシュ大学クイーンビクトリアメディカルセンターの体外受精、胚移植医療センター(IMC)に日本人初の正規留学生として国費留学。同センター客員研究員、IVFクリニカルリサーチフェロー


1987年  帰国



1991年  長崎大学医学部産婦人科講師辞職


同10月 長崎市江戸町にART岡本ウーマンズクリニック開業


2000年11月 同じ江戸町(県庁正門脇)に新築移転開業


2005年12月 日本不妊学会(現・生殖医学会)認定生殖医療専門医に合格


現在に至る
           



「患者さんに時々こわいって言われちゃうんですよー。僕の真剣な顔ってこわく見えちゃうみたいでね。困っちゃうんです」

 

はにかんだ笑顔でそうおっしゃった岡本純英院長先生。治療をあきらめざるを得ない患者さんの思いに共感し、寄り添おうとなさる先生の優しいお気持ちが、このインタビューを通してひしひしと感じられました。

 

1985年より、モナシュ大学クイーンビクトリアメディカルセンター(オーストラリア・メルボルン)の体外受精、胚移植医療センター(IMC)に日本人初の正規留学生として国費留学し、生殖医療の最新医療を学ばれたことが、岡本先生に大きな影響を与え、帰国後長崎大学医学部産婦人科をお辞めになり、長崎でも患者さんが来やすい一等地に「ART岡本ウーマンズクリニック」を開業。今年で開業25周年を迎えられています。「ひとりでも多くの悩める女性たちに赤ちゃんを」という先生の熱い思いは何年経ってもお変わりなく、お話をお聞きするとその思いは一層募っておられるように感じました。

 

一方、不妊にならないようその予防の活動にも力を注がれ、現在NPO法人不妊予防協会の副理事長も務めておられます。長年長崎で最も専門性の高い生殖医療を提供されているクリニックの院長としての立場と、NPO法人不妊予防協会の副理事長としての立場の両側面からお話を伺ったインタビュー、ぜひご覧ください。

     

永森: 年齢を含め、不妊治療の終結の時期やタイミングについて、どのように考えていらっしゃいますか。

 

Dr. 岡本:
産んで育児20年の責任を考えると、閉経の意味が見えてきます。12歳から42歳の30年間、400回の排卵の間に、将来の家族構成を見据えた人生設計が必要なわけです。そのために、有用な情報をひとりひとりの女性に与えなくてはいけません。初診の42歳と治療中の42歳を考えてみてください。私のクリニックに42歳になってからいらっしゃる方もいますが、無知なる前医の責任は重いと思います。患者さんが可哀想ですよね。

 

永森: 明らかに治療の継続は無理だと判断された場合、患者さんに伝えますか。

 

Dr. 岡本: もちろん伝えます。セコンドのタオル(ボクシング)の愛を込めて。

揃ってベンチに腰をかけて、湖面を見ながら、石を投じて湖面の波紋を見ながら・・・、そんなイメージで世間話しをします。患者さんに寄り添うこと、気持ちの上で孤立させないことが大事だと思っています。

 

永森: 終結について患者さんとお話しされる時、気を付けていらっしゃることはありますか。

 

Dr. 岡本:
ご本人が自分に納得されるよう、言葉をかけます。人生には、全てが手に入るわけではない不条理なことがあることを確認してもらうしかないんですよね。患者さんにとってとても大事なターニングポイントですから、単なる慰めやいい加減な励ましはしたくありませんし、冷たく放り出すような態度も論外です。今後の情報の提供と主治医の哲学をしっかり伝えています。

 

永森: ドクターには話しづらい、質問しづらいという患者さんからの意見をよく耳にしますが、ドクターは患者さんと向き合う時間についてどう考えておられますか。

 

Dr. 岡本: まず、患者さんが発信してくださらないと応じようがありません。“しづらい”という思い込みをどうやって解きほぐすか?
いろいろと考えますね・・・。患者さんのことを一所懸命考えて集中していることを誤解されるのは、辛いことです。愛想だけで実力を伴わないドクターが、自らを“優しい先生”と称し、売り出して媚びる、そういうドクターになびく患者さんにも自己責任はあります。失った時間、身体能力は取り戻せませんからね。ドクターと患者とはいえ、人間同士です。僕はこわく見えると時々言われますが、患者さんからの質問に対してはいつも真摯にお答えしているつもりです。質問があれば、遠慮することなく聞いてもらいたいと思います。

 

永森: 患者さんに対して、現在、心のケアは充分だと考えていらっしゃいますか。

 

Dr. 岡本: 永遠のテーマだと思いますので、努力を続けていきたいと思います。

当院では、どの部門のスタッフも患者さんの心に寄り添った姿勢で役割をこなせるように、

看護部門に4名、受付部門に1名、心理部門に1名の生殖医療相談士、そして外部からの生殖心理カウンセラー(非常勤)もおいて、心理チームを強化しています。スタッフの中で、患者さんのために心理支援のスキルを学びたいという者がいれば、積極的にセミナーや養成講座などに送り込んでいるんですよ。スタッフのやる気は、おのずと患者さんに届くと思いますからね。

  
        (心理チームのみなさん)

 

永森: ドクターができる患者さんへの心のケアとは?

 

Dr. 岡本:
主人公は患者さん、ドクターは指南役。自らに患者さんの期待に応えられる力(臨床的能力)と、カリスマ的パワーは欲しいですね。そのうえで、患者さんの心の扉を開く心理学的要素も身につけたいと思います。患者さんに共感できる心構えを絶やさないのが、僕の信念かな。

 

永森: 不妊当事者に対するカウンセリングについて、その必要性を含め思われることは?

 

Dr. 岡本:
まず生殖医療の場合、患者が2名(男女の夫婦)、怪我でも病気でもないのに結果が出ない健康体という特殊性があるわけです。原因が特定できる“器質性不妊”と、原因が不明の“機能性不妊”によっても異なりますが、特に“機能性不妊”の場合は、より心の問題が重い。いずれのケースでも患者さんに対する心のケアは必要だと思いますよ。そうですね、ドクターは結果の出せるスポーツドクター。ですから、カウンセリングを司るコーチ役も必要ということでしょうね。結果が出せたら根本は解決するはずなのでしょうが、そうとも言い切れない。またその先には新たな問題が生ずる、というのが人生だとも思うんですけどね。

 

永森: 養子縁組について、また、治療中に養子縁組の情報を患者さんに案内することについて、お考えをお聞かせください。

 

Dr. 岡本:
伝えるとしたらならば、失礼にならないように伝えなくてはならないでしょう。まずは情報伝達。間の取り方は難しいですね。必要と考える人、考えない人、置かれている立場もそれぞれです。追い込まれた立場の人もいれば、自らの気持ちが相反している人もいるでしょう。患者さん次第ですね。

 

永森: 不妊治療から卒業する患者さんの卒業式があるとしたら、どんな言葉で送り出したいですか(一言で)。  

 

Dr. 岡本: よく頑張られましたね。

 

永森: 不妊治療をやめて、子どもをあきらめていく患者さんに対してメッセージをお願いします。

 

Dr. 岡本:
実は世の中に、同じ立場の方たちがたくさんいらっしゃいます。静かに暮らしている方たちなので、あなたは今まで気がつかなかったかもしれません。でもきっとこれからあなたの目の前に現れるでしょう。人生の先輩となるその方たちとも、触れ合ってみてください。

不妊治療をやめたからといって、また子どもをあきらめたからといって、人生において子どもを完全にあきらめきれるわけではないでしょう。人生の時は常に流れていきます。友人の成長した立派なお子さんを目にした時など、悲しさがよぎるのではないでしょうか。それでも正直に「うらやましいですね」と心から讃辞が送れるくらい、人は強くなれるものです。なりましょう。

 

永森: 最後に一言。

 

Dr. 岡本: 患者さんのご期待に応え、最先端の技術を提供できるよう日夜努力を続けていきます。

その上で、患者さんと心が通い合い、受診して良かったという言葉をいただけるよう、素晴らしいスタッフと共に精一杯頑張り続けます。

 

**********          **********          **********          **********

【永森談】

 

ART岡本ウーマンズクリニックのサロン的な温かさが感じられる空間は、患者さんの緊張感が和らぐようなアットホームなデザイン。

  

  

このクリニック内にある院長室でじっくりインタビューさせていただきました。

ご自身の思いや考えを一所懸命相手に伝えようとなさる姿勢とパワーに溢れた岡本院長先生は、ケラケラとお笑いになったかと思ったら、瞬時に真面目で真剣な表情をされるなど、表情豊かなドクター。淀みのない一直線のその眼差しは、まさに先生の真っ直ぐなお人柄を象徴するようでした。

 

この道に進まれて最初に目を通されたというこの2冊は、今でもとても大事にされていらっしゃり、中をぱらぱら拝見すると、赤線がびっしり。


  

  

次にお見せくださったのたが、UNISENSE社デンマーク工場製の培養装置のポスター。ART岡本ウーマンズクリニックではこの培養装置を2台設置し、患者さんの受精卵をこの装置で管理されているというお話へと続きました。

  

受精卵の成長は、通常1日~2日おきに培養士さんが培養装置から取り出して顕微鏡で確認するものですが、開閉して受精卵を外に出すと、外気や光にあたることでストレスがかかるとのこと。その受精卵へのストレスをなくすために、岡本院長先生はこの装置を導入されたそうです。よくよくお聞きすると、培養装置の中にカメラが設置されているので、パソコンに繋げ、開閉することなくモニター上で受精卵の成長を確認できるという、なんとも優れた素晴らしい装置でした。こうした最新機器も日進月歩なのですね。受精卵に対しても最善のケアをなさる先生から、完璧な医療を目指す姿勢を感じずにはいられませんでした。

そうした院長先生の診療方針によるものか、長崎の不妊治療施設の中でも妊娠数はダントツです。


上記は、2012年に長崎の読売新聞に掲載された「不妊治療 病院の実力」という記事。2011年の述べ妊娠数は276件でしたが、2014年度は358件と着実に増えています。

お忙しくなるわけですね。


そして。

院内に、こんな張り紙を見つけました。


  

その場にいらっしゃる患者さんの気持ちに思いを馳せ、堂々と宣言なさった張り紙。

細やかな心遣いが随所に見られ、温かい気持ちになりました。

 

インタビューの最後はひょんなことから、“星”の話に。

 中学生の頃から星を観るのが大好きだとおっしゃった岡本先生。

「先生はロマンティストなんですね」 そう私がお訪ねしたところ、

「ちがうちがう、僕はぜんぜんロマンティストじゃないんですよ。ロマンティシズムの目ではなく、理系の目で星を観るんです」 そんなお返事が返ってきました。

星をご覧になる時は理系の目かもしれませんが、患者さんと向き合われた時は、人の心を見つめる温かい目をお持ちの先生。

 

私も終結を迎える時、岡本院長先生から愛のこもった「セコンドのタオル」をいただきたかったと痛感したインタビューでした。
岡本院長先生、貴重なお時間をありがとうございました。

   

永森咲希
(最終インタビュー: 2015年10月4日)